2012年 ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア 活動報告書

2012年2月8日

 「成田空港にて」

 早朝6時。日暮里駅のホームは成田空港行きの列車に乗り込む人たちで混雑しています。

その中でもひときわ目立つ数人の集団が見えます。大きなカバンを幾つも持ち、その一つには「RELIEF SUPPLIES HELLO ALSON」(救援物資)と書かれています。それを持つ幼顔には明らかに旅行客とは違う緊張した面持ちが伺えます。沢山の人達の思いが詰まったその袋を持つ彼らこそが、今年全国から集まった25名の高校生達です。

    

(AM 7:30) 

この国の玄関口でもある成田空港もこの時間では人もまばらです。その広大なフロアの一角に「2012年 ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア」に参加をされる皆さんが集まっています。今年は総勢74名の参加者に恵まれました。そして昨年まで各主要地域から出発していた飛行機も今年は全て成田からの出発となり、北は北海道、南は沖縄まで、全国の参加者が一堂に会しました。簡単な事務局紹介と会長 林 春二 先生の挨拶が終わり、いざ出発となります。今年はどんな感動と出会いが待っているでしょうか。今日本では0°の寒空です。今から4時間後には30°を超えるフィリピンの地に立ちます。不安や希望、様々な思いを胸に飛行機は飛び立ちます・・・・。

      

 
(現地時間 PM 13:30)

 空港を出るとそこはまるで別世界です。むせかえるような空気と南国ならではの湿度。じっとりと汗が滲んできます。参加者達は今まで日本から着ていた黒や茶色の冬服を脱ぎすて皆Tシャツ姿になります。そのTシャツこそ今年のユニフォーム「2012年度版ハロアルTシャツ」です。赤や青、黄色や緑、様々な色がフィリピンの陽ざしに映えます。そしての胸にはデザインを担当する麻田キョウヤが私たちに託した思い。「繋がり」がポップで楽しいハロアルのロゴとなって描かれています。

 今年は74名、大型バスが2台となり全員がA班B班と別れます。そして更に各10人程度が1 ~ 6班に分かれそれぞれに班長が設けられ、大人も子供も様々な人達が4日間の活動を共にします。全員がバスに乗り込みました。各班で班長の点呼が始まります。 
 いよいよ今年の最初の活動「フィリピン カビテ市 ワカス小学校」へ物資の支援活動へ向かいます。

   

 
(PM 15:00)
「カビテ市・バランガイ ワカスエリア 2」

 舗装と言っても日本のように穴一つない綺麗な道路とはお世辞にも言えない凸凹道を通り、バスは目的地を目指します。空港から約45分。マニラの中心地を抜け、むき出しのコンクリートとトタンに覆われただけの小さな家々は、否応にも日本とはまるで違う現実を参加者の目に焼きつかせていきます。

 バスが到着しました。しかし、物資を配付する為に用意された場所は、あまりにも細い路地の先にある為、大型バスが入り込むことはできません。駐車した位置から800メートルほどの距離は、安全面や時間的問題も生じるため、今回は2~3人程乗車できるフィリピンの人達の日常的な“足”となっている「トライシクル・バイクタクシー」をチャーターしました。

  

 

74名の参加者が3人程に分かれ、次々に乗り込みます。このバランガイ(村・集落)に住む住人の多くが「トライシクル」を生業としているため、現地スタッフと相談し、10数台を私たちの為に用意していただきました。料金は1台約8ペソ(日本円で16円程度)。参加者たちは初めて乗る乗り物と現地の方々の屈託のない笑顔、そして私達を心から歓迎してくれる歓喜の声に、先ほどまでの緊張も少しずつ解けていった様子です。 

 

「物資配付活動」
 
このエリアでは550人分の お米・歯ブラシやタオル、固形石鹸、洋服などの生活用品を配布しました。この地区はバランガイ1・2 に分かれており、約3,200人の人達が住んでいます。そのうち1,000人が子供たちです。海沿いに面したこの地域の人々は主に漁師や工事現場作業員、そしてトライシクルといった仕事で生計を立てており、一日の収入は約200ペソ(約400円)その中で食事は一日2回、食費代は6~7人ぐらいの平均的な人数の家族で一日100ペソ(約200円)程度です。しかし、年々増え続ける住人に対しそれだけの仕事がなく生活はとても貧しい状況です。

 ここでは高校生達が主役です。全員が手渡しで直接フィリピンの方々に物資を配っていきます。現地スタッフが簡易テントを用意してくれてはいますが、気温28度を超える暑さと、1,000人近くの出迎えの熱気で、会場はむせかえるようです。

 ここは毎年カビテ市の市長からの依頼で数年前から支援しているエリアでもあります。今年は太鼓やラッパの演奏付きで私達を出迎えてくれました。

 鳴り響く歓迎のメロディーのなか、高校生達、参加者達の笑顔が絶えません。住人たちも最近高騰しているお米や高価な日本製の石鹸、歯ブラシを手に、「サラマッポ・ありがとう」と口々に言います。しかし、私達は大切なことを忘れてはいけません。この物資は全て日本でこの活動に賛同し、1本の歯ブラシ、1枚のタオルに思いを込めて下さった皆さんのお陰だということを、そして現地に到着し、混乱もなく、安全にこの活動ができるのもフィリピンにいる我々の仲間が事前に念密な打ち合わせをしておいてくれたからです。

 私達は忘れてはいけません。私達はボランティアを受ける前に既に多くの人たちから私達自身がボランティアを受けているということを・・・

 物資配付が終わり、私達がバスに乗り込む時、子供たちが大きな声で叫んでいます。

「Thank you、来年もまた来てください・・」

 名残惜しそうに見つめるその眼と、マニラの夕日に映る参加者達の笑顔がとても印象的でした・・・